住宅ローンは住居費の前借り、資金計画さえ間違わなければ問題ない

投稿者: | 2013/05/06

 この個人ブログの更新を休止していた間に引っ越した。余りにも露骨な新築・持ち家優遇の国の政策や、旧態依然の不動産業界の慣習などに対し、いろいろ思うところがあり、折にふれてTwitterでつぶやいてきた。一度、きちんと文章にまとめたいと思っているが、完全に住所が特定されてしまうため、躊躇している。

 以前から、新聞や雑誌には、家計簿(年間/月間の収支)をもとに、アドバイザー(FP)が診断するという記事が時々掲載されていた。新聞・雑誌記事をWebに転載するケースが増え、インターネット上でも頻繁にみかけるようになってきた。また、新築マンション情報誌「スーモ」では、巻頭特集として、世帯人数・年収・物件価格(物件情報)・住宅ローンの実例を紹介する記事が定期的に掲載され、ここ1年、その頻度が以前より増えている気がする。

・住宅を賃貸と購入どっちがいいの?と聞かれたら「賃貸最強!」と答えよう
・こんな理由で家を買ってはいけない! その3「結婚したから」「子どもが生まれるから」
※その1・その2・その4(最終回)もあり

 「賃貸最強!」は、ある意味、正しい。いくら家賃より出費が抑えられるからといって、既婚・未婚問わず、貯金がほとんどない状態で住宅ローンを組んで家を買うことには反対だ。ある程度、貯蓄があり、総支払額が確定している全期間固定金利(フラット35)で、20年~35年間、払い続けられる見通しが立っているならいい。多くの場合、不動産会社に勧められるまま、不確定な変動金利を選んでしまう。

 「結婚したから」「子どもが生まれるから」、圧倒的に多い「家賃がもったいないから」という安易な理由で家を購入するのも反対だ。日本は、引越しに伴う事務手続きが多く、気軽に引っ越せない。持ち家の場合、そもそも、希望する価格で売却できない場合が考えられる。その街に定住するつもりがないなら、買うべきではない。いくら好立地でも、永久に「売れる」「貸せる」保証はない。

 ちなみに、2012年の住宅ローンの新規借入者の金利パターンは「変動」が5割~6割程度、「全期間固定」が2割程度、残り2割が10年・5年・3年などの「一定期間固定」だったはず(公開データあり。後で探して正しい数値に置き換えます)。これまでは、見た目の支払い額が低い「変動」を選ぶ人が多数派だったが、今年に入り、「固定」を選ぶ割合が増えているらしい。要するに、不動産会社と提携した銀行が、総支払額が増える固定金利を薦めているようだ。

 個人的な見解として、少しでも変動金利の金利が上がると返済に困る場合は、期間固定を含む固定金利を選び、最初から問題なく支払える額を目安に、借入金額(≒物件予算)を決めるといい。借入金額が少なく、10年~20年の短期間で返済できる見込みがあるか、親の遺産を相続すれば全額繰上げ返済できるなら、変動金利でも問題ない。どんな場合でも、固定金利のほうがリスクが少なく、安全だという主張には同意できない。金利上昇による未払いリスクがない代わりに、総支払い額が増え、最終的な損得勘定では「損」する可能性は高い。

リスクの少ない「身の丈にあった物件」とは?

 一般メディアの記事では、たいていの場合、「持ち家」と「賃貸」のメリット・デメリットを挙げ、焦らずに十分に検討しよう、といった読者任せの無難な結論にまとめて終わる。実家に帰って同居する(実家を建て替える)という、一番手堅い第3の選択肢はない。賃貸や中古寄りの場合、「身の丈に合った物件を選ぼう」「新築にこだわらず、中古や郊外の物件も選択肢に加えよう」などとアドバイスし、持ち家購入を諦めようとさせる。1年先もどうなるかわからない時代、リスクはできるだけ避けたほうがいいに決まっている。

 一方、「スーモ」に代表される、新築至上主義の媒体の場合、「親に資金援助を頼もう(こころよく援助してくれるよ♪ 先輩もたくさんもらっているから♪)」「都心・駅近にこだわらず、多くのモデルルームを見て、予算に合った物件を探そう」「できるだけ資産価値の高い(利回りのいい)街の物件を選ぼう」と、ポジティブなトーンで購買を煽る。どちらも読者=消費者の立場ではなく、媒体や広告出稿主の意向を反映した「ポジショントーク」に見える。独立FPの一部は、消費者の立場に立ち、持ち家購入に伴うリスクを真剣に心配してくれているようだが、住宅ローン返済中の当事者にとっては、むやみに不安を煽っているようにしか見えない。

 賃貸/持ち家、独身/ファミリー向け問わず、日本の住居費は、労働の対価として得られる収入に比べ、高すぎると感じる。まるで家に住むために働いているみたいだ。1物件あたりの面積を広くするか、もっと単価を安くするべきだ。首都圏の新築マンションの平均価格は、3000万円台後半。首都圏(東京23区・神奈川東部・埼玉と千葉の東京寄り)では5000万円超の物件が多く、もはや親の資金援助なしには買えない。

 適正価格に下がるまで待ちたいところだが、その間、割高な家賃を払い続けなければならないため、仕事などの都合で実家に戻れない(戻りたくない)場合は、家を買っても損はないと思う(具体的な数字は、別途、検証する予定)。一番ベストな選択肢は、親と同居し、浮いた住居費を貯金すること。「実家最強!」だ。もちろん、一緒に住めるだけの広さや、親自身に金銭的余裕があればの話。自由とお金、どちらを重視するか。子ども1人につき、教育費だけで1500万以上かかる現状を考えると、子どもを産み育てるつもりなら、多少の自由を犠牲にしても貯金したほうがいい。

 「身の丈にあった物件」といっても、決まった目安はない。そこで、一つの目安として、ごく普通のマンション・建売住宅の場合(土地代の割合が低いタワーマンション、逆に土地代の割合が高い都心の高級マンションは除く)、建物価格に相当する額を住宅ローンの借入最大額とし、購入時に頭金として、土地価格に相当する金額を支払うという資金プランを提案したい。

【身の丈にあった物件の目安】
賃貸:家賃+駐車場代
持ち家:住宅ローン(建物価格)+管理費+修繕積立金+駐車場・駐輪場代

※土地価格に相当する金額を頭金として購入時に支払う(借入金額を減らす)
※固定資産税は、資産に対する課税とみなし、別扱いにする
※戸建ての場合でも、管理費・修繕積立金に相当するメンテナンス費用が必要

 自分の場合、頭金として、物件価格の3割強(≒土地価格相当分)を購入時に支払ったため、住宅ローン返済額・管理費・修繕積立金・駐車場代等の合計は、以前の賃貸アパートの「家賃並み」となっている。部屋の広さは以前の1.5倍以上。周辺相場よりやや割高な敷地内駐車場の使用料を除外すると、家賃よりむしろ安いくらいだ。優遇後0.775%の変動金利を選んだため、住宅ローンの金利が上がると、以前の家賃を上回ってしまうが、家賃相場がまったく変わらないと仮定した場合、プラス3%程度の金利上昇なら、同程度の広さの賃貸物件よりも安い。

 とはいえ、土地価格と建物価格は、契約書を見るまで知らなかった。たまたま一致しただけだ。不動産業界は、情報開示の一環として、物件価格の内訳を事前に開示してほしい。ウェブサイトにも、内訳を記載した主なプランの価格一覧表を載せるべきだろう。

 毎月支払う、修繕積立金等を含めた「住居費」の合計が持ち家・賃貸ともほぼ同等なら「身の丈にあった物件」持ち家購入後のほうが高額の場合は「不相応」と判定する。ただし、手持ち資金として、年収の1年分(生活費の1年半分)は残しておく。貯金がない/少ない場合は、ライフスタイルと出費を見直し、頭金と引越し費用などの諸経費を捻出できるくらいになってから、改めて検討したほうがいい。

 家購入時の定説「頭金2割」に、これまで根拠はなかった。しかし、土地代と建物代を別に考え、「土地代は一括で払う」という考え方が浸透すれば、無謀な資金計画による購入は不可能になる。日本の住宅ローンの問題点の一つは、売買契約を結んだ時点の年収(正しくは前年度の年収)が今後も続くと仮定した「借り過ぎ」が問題であり、住宅を担保にお金を借りる「前借り」の仕組み自体は悪くない。少なくとも、貸す側/借りる側が今後の見込みを厳しく想定すれば、一家離散をもたらすような住宅ローン破綻は減るだろう。インターネットユーザーに広がる、住宅ローンに対する不信感も和らぐのではないか。クレジットカード嫌いを公言している人ですら、現状、スマートフォンなら、何の疑問を抱かず、回線契約とともに2年間の分割払い(前借り)で購入しているのだから。

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