経済活性化策を考える

投稿者: | 2012/05/06

 国策として、自動車業界が保護されているのは、誰の目にも明らかだ。自動車の取得(購入)・維持に高い税金を課す一方で、「エコカー減税」によってまだ動く古い自動車からの買い替えを促す、という矛盾した政策が実行されている。制度終了後の値引き幅がわからない以上、この制度を利用したほうが得なので、買い替えを検討していた層は飛びつく。しかし、「若者の車離れ」が指摘される今、自動車業界が取り組むべきは、自動車(特に普通車)に関わる税負担・維持コストの引き下げと、安全性のさらなる向上だろう。少なくとも、東京23区や横浜市内の駅徒歩10分以内に住む場合、自家用車は要らない。「車離れ」の最大の要因は、都心に住む者にとって「不要」だからだ。要らないものを見栄で買うほど、金銭的余裕のある人は少ない。

 同様に、住宅業界も優遇されている。しかも、これまでは「新築」に偏っており、わずか築十数年で建物は「資産価値ゼロ」とされ、住み替え・建て替えが強要された。最近、人口減少や都会への一極集中、相続時のトラブルなどが重なり、全国各地に誰も住んでいない、誰が持ち主すらわからない「空き家」が増えているという。こうした流れを受け、政府は、中古住宅の流通を活性化させる方針らしい。賃貸住宅も狭い「ワンルーム」は認可されず、以前より築浅の物件は面積が広くなっているという記事を見た記憶がある。借り手にとって、不利益な礼金や更新料もなくなりつつある。新築・中古・賃貸の差が小さくなり、住まいの選択肢が増えると素直に歓迎すべきなのか、住宅業界の対象が自動車業界並みに拡大されただけとみるべきか、専門外のため、判断できないが、これまでの制度・慣習が「変わる」兆しは出てきている。

 2012年3月、国会に関連法案が提出された「子ども・子育て新システム」は、賛否両論が巻き起こっている。幼稚園と保育園の機能を一体化した「総合こども園」の創設、いわゆる幼保一体化は、子どもの教育面にとっては例えプラスの効果があっても、実際に利用する子育て世帯にとっては費用面でマイナスになる可能性が高い。営利色が弱く、それゆえ地域差の多かった保育所の設置数を増やすため、異業種の企業でも自由に参入できるようにする「規制緩和」策の一つだと受け取った。

 子どものためならいくらでも投資する共稼ぎの富裕層をターゲットにした、新たな成長分野「保育ビジネス」の誕生だ。どちらかというと、インターネット上では、否定的な意見のほうが多い気がする。特に、実際にリアルタイムで子育てをしている母親クラスタからは、不安・不満の声が挙がっているようだ。肯定的な意見もあるものの、参入企業だけが儲かるような子ども・親不在の新システムなら、少子化の流れは変わらないだろう。

 「経済活性化」や「少子化対策」の名のもとに、明らかに優遇され、その分、国からの介入が多いこれらの業界と比べて、通信業界(固定電話・固定インターネット・モバイル通信)は、果たして優遇されているのだろうか? 地元密着型のCATVを除き、傍目には、まったく優遇されていないようにみえる。にも関わらず、総務省や国民生活センターから、通信障害、料金体系、販売方法などにさまざまな指示・クレームが入り、それらの「指導」に振り回された結果、ますます一般消費者にわかりにくくなり、特にスマートフォンは、OSや機能、料金体系・規約などに対する十分な知識がないと使いこなせず、事実上、「パケット定額必須」のため、毎月、5000円以上支払う羽目になっている。

もはや生活に欠かせない通信業界こそ優遇すべき

 固定とモバイルをあわせたインターネットは、今や、電気・水道に並ぶ、生活に欠かせない重要なインフラ。今後は、通話より、汎用性の高い「モバイルデータ通信」が主役になるだろう。あくまで個人的な印象だが、契約件数No.1のNTTドコモを最優先で扱い、それ以外の業者を冷遇しているようにみえる。こうした「空気」が伝わってくるからこそ、今なお「ドコモ信者」は多く、ドコモが昨年夏以降、スマートフォンのラインアップを増やした結果、もともと人数の多いドコモユーザーの一部が従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)からスマートフォンに買い替えただけで、スマートフォンの販売比率は一気に上昇し、2012年3月には77.8%にも達した。2010年秋以来のスマートフォンブームは、ドコモの方針転換が生み出したものともいえる。Android搭載スマートフォンとアップルの「iPhone」は別物という指摘は、ある意味、正しく、ドコモがiPhoneを出さない真の理由は、海外企業のアップルの存在を快く思わない国からの圧力かもしれない。

 新聞などマスメディアでは、数年前から、毎月の生活費に占める通信費の割合が増え、さまざまなモノやサービスが売れなくなったと報道されている。私の場合、大学3年の夏に携帯電話を購入して以来、余り使っていないにも関わらず、月数千円も支払い続けてきた。長引く不況・消費の冷え込みを解消するため、いっそ通信業界全体を優遇し、一人2台まで通信料(基本料・パケット定額料)を引き下げ、通信費の負担を軽くすれば、案外、簡単に景気は上向くかもしれない。少なくとも、自動車・住宅・保険など、もはや一部の人しか利用しない分野を重要産業として優遇するより、すでに人口普及率100%を超え、多くの人が所有している携帯電話の通信ネットワークに対して投資し、公衆無線LAN(Wi-Fiスポット)を含め、通信速度の高速化や電波状況の安定化を図ったほうがよほど高い経済効果を見込めるのではないだろうか。

結論:日本の携帯電話代は高い

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