宅配トランクルームは「情弱ビジネス」か、「持たない暮らし」の必須サービスか

2017/5/5 07:50 | つぶやき, 社会批評 | 個別URL

 宅配便を利用した「宅配型トランクルーム」を利用しようとしたら、夫が激怒した。専用段ボールを送付しない限り、契約は成立せず月額費用は発生しない、請求した段ボールは収納に再利用する、といったにも関わらず、箱をメチャクチャに壊された。「宅配トランクルームビジネスは今後普及する。だから、物流・倉庫関連の企業の株価が上がっている」と主張すると、「ステマで盛り上がる”情弱ビジネス”だからだ。自分が情弱から巻き上げるならいいが、巻き上げられる側になってはダメだ」とさらに怒った。

オンラインストレージのリアル版「宅配トランクルーム」

 実は、「宅配トランクルーム」は、現在、母一人で住んでいる家を遺産相続した際、自分達の荷物を置くトランクルームとして活用した上で、最低限かかる維持費用をゼロにするためにやりたいと思っていた副業のアイデアに近いものだった。自宅が狭く、年に数回しか使わないもの、捨てたくはないが、捨てられないものを保管する場所が欲しい、というニーズは高いはず。むしろ、「職住接近」で地価の高い都心部、その近郊に住む人が増えると、「狭い自宅にモノを極力置かない」ことが重要になる。

 「宅配トランクルーム」は、モノの正当な価格設定を判断できない”情弱”ではなく、正当に判断したうえで、必要とあれば費用を投じることを惜しまない、金銭的なゆとりのある富裕層向けのサービスではないか。ならば、今後、伸びるに違いない。

いま一番欲しいもの―それは自分だけのスペース

 子どもが部屋を毎日散らかし、夫はゴミ出しをほぼ一切せず、室内はデットスペースばかり、という状況を打開するため、当初は収納用品と本棚を検討していた。しかし、実物を見てもピンとこず、本当にいま、欲しいものは「自分だけのゆったりとしたスペース」だと気づき、視界から要らないものを消せばストレスが減ると気づいた。

 コストと手間の点で、通常の「トランクルーム(コンテナBOX)」より「宅配トランクルーム」のほうが割安で、災害時のセキュリティも高いと判断した。調べるまで知らなかったが、すでに複数のサービスが乱立し、情報サイトや個人ブログで紹介されている。実際に利用したユーザーの評価もおおむね上々。基本的な仕組みは同一のため、預ける方式や対象となるアイテム、プランなどで差別化を図り、すでに過剰競争時代に突入しているようにもみえた。

  • ■2017年5月時点の主な宅配型トランクルームサービス(50音順)
    ・サマリーポケット
    ・SOLA
    ・デリバリー★トランク
    ・宅トラ
    ・hinata trunk!
    ・HIROIE(ヒロイエ)
    ・minikura
    ・ヨドクラウドボックス
    ・利創庫(risoco)/虎んくるーむ
    ……etc
    ※検索上位に入っていたサービスのみ。多すぎて網羅できていません
  • 手元に残すべきものは実は何もない―すべて捨ててしまうという判断

     夫がここまで激昂するとは予想外だったが、私が、「宅配トランクルーム」の預けたものを二度と手元に取り寄せるつもりがないと見抜いていたことには感心した。ちゃんと”わかって”いたんだ。

     専用ボックスが届いたら、真っ先に入れるものは決まっていた。妊娠中に買ったマタニティグッズと新生児用品だ。子どもはあっという間に2歳になり、もはや乳児ではなくなってしまった。結婚式の案内や仕事の紙の資料・パンフレットなど、ほとんど見返さないものも預けるつもりだった。

     「もう一度使う可能性」や「思い出」に執着し、捨てられないものを送って部屋を片付け、決断がついたら、書籍・コミック・BDも、一定料金で保管数無制限のサービスに預けるつもりだった。引取手数料が割高なので、サービスが破綻しない限り、一度預けたらそのまま、二度と引き取らない。それでもいいと思っていた。

     よくよく考えると、手元に残すべきものは、ほとんどない。日々、暮らしには、スマートフォンとノートPC、マウスだけあればいい。自分の人生には、結局、何もなかった。書き散らした文章は、ネット上のどこかに残っている。

     夫は言った。他所に預けるくらい重要度の低いものなら「一切捨てろ」と。――そうか、もう絶対に2人目はあり得ないのか。退職後に読もうと「積読」している紙の書籍やゲーム、コミック、聞き返そうとしているCDもムダなのか。おっしゃる通り、すべて捨てましょう。あまりにも価値観の違う私たちに永遠に2人目、3人目の子どもは産まれません。子どもが生まれるまで、正確には妊娠するまで、そのズレさえ気づかなかった自分の愚かさを悔やむしかない。

     何よりも、自分の言葉で綴ったオリジナルの情報をすること、作品を受容すること、街や文化、ヒットしているトレンドの意味を分析することに重きを置いている。何か新しい話題のスポットが誕生したら、そこに行って雰囲気を感じたい。「宅配トランクルーム」に限らず、新しいサービスが始まったら試してみたい。その際、最低限の信頼性とコストパフォーマンスの高さを基準に自分で考えて判断する。今回はその基準に合致していた。だから試してみたかった。

     改めて問う。掃除や食事作り、教育、トレーニングなど、自分の専門外のこと、不向きなことは外部業者を利用して外注化し、捻出した時間で自分しかできないこと、具体的には仕事、趣味、子どもとの遊びに費やすという考え方は、都心の大手企業に勤める会社員や経営者、公務員同士の夫婦など、世帯年収1000万以上のパワーカップルだけに許された贅沢か?

    ■【リアルでガチなレポート】
    年収600万円サラリーマンが住宅ローン3000万円借り、子ども3人を育てる暮らし

    2016年:共稼ぎ世帯1129万世帯/専業主婦世帯664万世帯
    【出典】労働政策研究・研修機構

     個人年収はともに世代平均を下回り、自分は能力不足、夫は会社の仕組み上、さらなる昇給の見込みは薄い。最大の生活防衛策は「節約」であり、最も避けるべきは、ずっと支払い続ける必要のある月額課金制のサービスだ。

     しかし、多くのBtoC企業は、安定した収益を得るため、従来の「売り切り型」から「月額課金サービス」への移行を進めている。一度契約したら「一生縛り」で「乗り換え」は基本的に許されず、消費者は、どんどん新しい課金サービスを追加契約する羽目になる。
     
     家事をはじめ、他人の代替の効くサービスの外注化・モノのサービス化は、今後ますます強まると確信する。同時に「格差」が広がる。負け組は、睡眠時間や自分の時間を削っても絶対的に時間が足らず、何者にもなれずに死ぬしかない。

     才能にあふれ、何者かになれたはずの自分は、無駄に時間を空費し、今も空費し続け、何にもなれず、ターゲットとなるべき読者に届かない言葉を書き綴っています。

     「月額課金サービス」のメリット/デメリットは、日用品の「定期購入」や、インクジェットプリンタとインクに代表される、本体は無料または格安で提供し、消耗品で稼ぐビジネスモデルとあわせて別途、まとめたい。

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