映画『るろうに剣心 京都大火編』感想――懐かしさと新しい魅力


 観るか観ないか、だいぶ悩んだ末、映画『るろうに剣心 京都大火編』を観に行った。鑑賞料金は、レディースデーのため1100円。観客は、俳優のファンと思われる20~50代の女性が多く、まれに子ども連れもいた。

・映画『るろうに剣心』公式サイト

 映画版第1作は観ていない。映画公開にあわせて執筆された原作者によるセルフリメイク『るろうに剣心 -キネマ版(特筆版)-』は、情報は知っていたが、やはり見ていない。アニメ化時のキャスト変更と、縁編(人誅編)の展開に失望し、連載開始当初のような熱意を失ったまま、連載が終了したため、「今さら」感のある映画化に興味が沸かなかったからだ。映画版第2弾『京都大火編』も、志々雄真実役が大河ドラマ『新選組!』の沖田総司役だった藤原竜也だと知り、予告編を見るまでは観る気はなかった。
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 冒頭の日常シーンでは、和洋折衷・文明開化の街の様子に、実写ならではの美しさ、細かさを感じた。史実に忠実かどうかはわからないが、多くの人がイメージする明治初期の雰囲気は、こんな感じだ。洋装と和装の人が入り混じり、どんどん新しい文化が生まれ、民衆は陽気で明るい。志々雄一派が集うシーンも和洋折衷で、賛同する一般兵(モブ)は、明治維新に不平を持つ氏族が大半なのだろうかと、混沌とした幕末~明治初期に思いを馳せた。

 原作の『るろうに剣心』は、読切版から面白いと思い、初回から終盤まで、欠かさず『週刊少年ジャンプ』本誌で読んでいた。当時、少ない小遣いで、毎週、欠かさず買っていたのだ。1992~1994年前半は、週刊少年ジャンプ(WJ)全盛期で、『ドラゴンボール(DB)』『SLAM DUNK(スラムダンク)』『幽☆遊☆白書』などが連載され、1994年春発行の19号からは、『るろ剣』がスタートした。今から20年も前だが、鮮明に覚えている。

 初回から気に入った『るろ剣』のコミックスは新刊で全巻購入し、繰り返し読んだ。特に京都に行くまでの初期の話が好きだ。京都編(志々雄編)の開始時期を後ろ倒しにし、『シティーハンター』のように神谷道場の周辺で巻き起こるさまざまな事件に対し、剣心がその剣技と言葉で解決する短編エピソードをもっと多く読みたかった。また、友人から緒方恵美主演のオーディオブックを借り、後に2巻・3巻のみ中古で購入した。連載初期の剣心の人気は、『幽遊白書』の蔵馬の人気にあやかったものだったことは否めない。実写版の佐藤健のイメージとは少し違う。

 いま思うと、オーディオブック版の緒方恵美、アニメ版の涼風真世は、優男の成分が強すぎで、剣心の強さが際立っていない。細身だが、男らしい佐藤健は、剣心の本来の魅力を引き出したベストキャストといえるだろう。代わりに、映画版では、ヒロインの神谷薫が女性らしくなり、「剣術小町」の印象は弱まった。他のキャラクターも原作とは少しずつ異なり、意図的な改変なのか、役者の演技から生まれた偶然なのか、知りたいと思った。

 購入したコミックスは実家に置きっぱなしで、もう何年も読み返していないが、京都編までは、ストーリーもセリフもほぼすべて覚えている。映画版は懐かしく、海辺のラストシーンは、少しだけ涙が出てきた。

■鑑賞直後のツイート
-映画のるろ剣を観た。無双系のアクションが多く、冗長な部分もあったけれど、ラストは涙が出てきた。青春の思い出が実写になり、メジャーになった。映像技術の進歩はすばらしい。
-大河ドラマではイマイチだった江口洋介=斎藤一がカッコ良かった。謎の男は、師匠だよね? ストーリーは原作をなぞっているけれど、キャラは映画オリジナルで、より熱い剣心、狂気の蒼紫が印象深い。素顔の藤原竜也=志々雄真実は、大河ドラマの沖田総司のままだった。

 1994年の連載開始から15年以上も経ってから実写化され、演技力に定評のある豪華俳優陣によって話題になるという幸運に感謝したい。『るろ剣』は、TWO-MIXと並ぶ「青春」の思い出であり、歴史、特に幕末に興味を持ったきっかけ。大袈裟ではなく、生き続けてきてよかったと思った。

 原作と映画版では、ストーリーが異なる。第2弾の前編「京都大火編」は、基本的な展開は原作に準拠しているが、剣心と操、剣心と新井青空など、キャラクター同士のかかわり合い方が異なり、全体的にあっさりしている。原作は説明過多(ツッコミ・デフォルメ過多)だったともいえるだろう。子どもの明神弥彦は、映画版のほうがリアルだ。

 さらに、一部のキャラクターは、性格や雰囲気が原作と異なる。剣心はより男らしく、強さを感じられるようになった。十字傷はあまり目立たず、赤以外の着物がよく似合う。飄々としながら、根は熱い一面が行動から垣間見えた。相楽左之助は、見掛け倒しのチンピラ風になってしまったが、弥彦同様、よりリアルになった。斎藤一は、原作以上に仕事熱心で、際立った存在感を放っていた。一方、志々雄真実は、原作よりやや幼く感じた。映画オリジナルシーンで、火傷を負う前の素顔を見てしまったからだろう。幕末の時点ではまだ若く、当時は維新側は正義だと信じていた。

 懐かしくて、新しい。どうやって撮影したのかわからない本格的なアクションシーンや背景美術、小物などは、実写映画の新境地だろう。前編の『京都大火編』は、無双系のアクションが多く、なまじ先の展開を知っているだけに、やや冗長な感もあったが、後編の『伝説の最期編』は、1対1の戦闘シーンが増え、より密度が濃くなると思われる。ラストシーンに登場した福山雅治が演じる「謎の男」は、原作既読者は、最強の師匠こと、比古清十郎だと推測している。

 バトル中心のジャンプマンガ・歴史モノに新風を吹き込んだ作品『るろうに剣心』が、実写化・映画化をきっかけにより多くの人の目に触れ、再評価されることはやはりうれしい。映像技術の進歩にも驚く。原作をもとに、映画オリジナルの新たなキャラクター像を描き出した実写映画版は、独立した作品として評価されるだろう。後編も楽しみだ。