転入超過は東京都心とその周辺だけ 広範囲な「東京圏」への集中ではない


 2013年、3大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)のうち、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)だけ、転入者が転出者を上回る「転入超過」となり、超過数は9万6524人に達したと報じられた。東京都特別区部を1市として扱うと、全市町村の76.2%が「転出超過」に該当し、「転入超過」はわずか23.8%。人口が集中する人気エリアと、人口流出が続く不人気エリア・過疎エリアに分かれている。

・景気回復、東京圏で転入増(時事通信)
 総務省は1月30日、住民基本台帳に基づく2013年の人口移動状況を発表した。東京都で、転出が転入を上回る「転入超過」数が2年連続して1万人以上増加して7万172人となるなど、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉各都県)への人口流入が増加した。

・3大都市圏で東京だけ転入超過…2013年人口移動(読売新聞)
・<人口移動>東京圏転入超過9万人 景気回復で大幅増(毎日新聞)

 出典は、住民基本台帳人口移動報告 平成25年結果(総務省統計局)。全市町村のうち、最も転出数が多かった市町村は神奈川県横須賀市で、神奈川新聞(カナロコ)は、同じ県内での格差を大きく取り上げていた。東京圏のなかでも、明暗が分かれ、東京都心への通勤に便利な街、イメージのいい街、中・高所得者向けの新築マンション・戸建て住宅が多く供給された街に人が集まっている。

・横須賀市の人口「転出超過」全国最多、川崎は転入超過5位(カナロコ)

 総務省が1月30日に公表した2013年の人口移動報告によると、転出者が転入者を上回る「転出超過」は、横須賀市が前年比599人増の1772人に上り、全国市町村で最も多かった。一方、転入者が転出者を上回る「転入超過」は、川崎、横浜、藤沢の3市が上位20市町村に含まれた。横須賀市の転入者は1万2550人(前年比687人減)、転出者は1万4322人(同88人減)となり、転入者の落ち込みによる転出超過が拡大。(~中略~)県内の状況について、浜銀総合研究所の新瀧健一主任研究員は「2013年は首都圏の中でも東京都心への人口集中が強まっており、都心から距離がある横須賀では転入の減り方が大きかった」と指摘。(~中略~)都道府県別では、神奈川県は転入者20万7670人、転出者19万5314人で1万2356人の転入超過。東京都(7万172人)に次いで多かった。

・市長「遺憾」、転出超過が全国一の40万都市(読売新聞)
 (前略)転出超過は、別の自治体への転出者が転入者を上回ることで人口減少を示すもの。横須賀市ではここ10年、2009年を除いて転出超過が続き、死亡による「自然減」も加えた人口減に歯止めがかからない実態が明らかになった。同市の人口は1月1日現在40万9340人。1992年5月の43万7170人をピークに減り続け、2012年4月には藤沢市に抜かれて県内5位に転落した。転出が多い子育て世代などを対象に、会員制定住応援サイト「すかりぶ」で協賛企業のサービスなどの情報提供をしているが、有効な打開策とはなっておらず、新年度も新たな定住化施策を実施する予定。

「街の勢い」を見る指標は、15~64歳の「現役世代」の転入超過数

 ふと思いつき、土地勘のある神奈川県に限り、区・市町村単位で、転出超過数の多い順に並べてみた。さらに、3つの年齢層(0~14歳=子ども、15~64歳=現役世代、65歳以上=高齢者)に分けた詳細データをもとに、「現役世代」の転出超過数の多い順に並べてみた。

■2013年 神奈川県 区・市町村別 転入超過数 
ワースト5<総数>

1位:横須賀市(-1772人)
2位:横浜市金沢区(-955人)
3位:横浜市港南区(-813人)
4位:平塚市(-763人)
5位:横浜市栄区(-688人)

■2013年 神奈川県 区・市町村別 転入超過数
ワースト5<15~64歳=現役世代・子育て世代>

1位:横須賀市(-1481人)
2位:平塚市(-888人)
3位:横浜市金沢区(-866人)
4位:横浜市港南区(-692人)
5位:横浜市旭区(-679人)

※全数データはこちら(Googleドキュメント)

 横須賀市と横浜市金沢区、横浜市港南区と栄区は隣接しており、同じエリアといっていい。横浜市南部から三浦半島にかけて、全体的に人口流出傾向にある。しかし、「現役世代」に限ると、横須賀市のワースト1位は変わらないものの、2位に平塚市、5位に横浜市旭区が入り、金沢区・港南区・栄区は順位が下がる。「街の勢い」を見る指標としては、後者のほうがより適切だろう。平塚市と旭区は、全年齢の転出超過数より、15~64歳の転出超過数のほうが多いが、15歳以下はわずかながら転入超過で、平塚市は65歳以上もわずかに転入超過となっていた。独身者や子どものいない夫婦が他の市町村に転居する一方、中学生以下の子どものいる家族や高齢者が引っ越してきていると推測される。

神奈川県の約半数の区・市町村は「転出超過」、人口減少へ

 神奈川県内の区・市町村は計64。そのうち、約半数の54.7%、「現役世代」に限ると、6割近い59.4%が「転出超過」だった。転入超過数が2000人を超える人気エリアは、大規模タワーマンションの建設が続く武蔵小杉を含む川崎市中原区、横浜市港北区、鶴見区のみ。神奈川県は、全体的に、移住先として人気を失っているのではないだろうか?

 人気低下の理由は、地震・津波・噴火などの自然災害のリスクに対する懸念と、都心回帰(23区至上主義)の高まりだろう。ずっと海の近くで暮らしてきた身としては、海から15分以上離れた内陸部に移住する気はまったくない。同じように、内陸部で生まれ育った人は、自然と海に近いエリアを避けるため、上京後、初めての住まいとして、神奈川ではなく、埼玉や千葉の大都市や、東京23区・多摩地区を選び、そのまま住み続ける。

 15~64歳の「現役世代」の流出が続く街は、人口減少が進み、居住者が一定数を下回ると、生活できなくなる恐れがある。「東京圏への集中」ではなく、実態は、「東京都心とその周辺の一部の人気のエリアへの一極集中」だ。街の栄枯盛衰は、自然の流れかもしれない。確かに、三浦断層が走る横須賀市とその周辺は、立地的に厳しく、今後の人口増は望めない。しかし、自治体によって差が激しい、シティプロモーションや地域活性化、育児・教育支援などへの取り組みの積み重ねが、人口の増減や「街力」を左右しているとしたら、東京圏にも関わらず、「転出超過」となっている区・市町村は、何らかの対策を考えるべきだろう。

駅周辺すら人口減が続く「残念な街」 問われる市の姿勢

 2013年11月、市民と市長の対話集会「市長と語ろう!ほっとミーティング」(平成25年度・第11回)に参加した。今回の参加者・傍聴者のなかでは最年少。街づくりの問題として、「街力」のなさ、特に若年層での不人気の問題を挙げ、シティプロモーションの重要性を力説した(詳しくは、開催結果報告書を参照)。その後、地元のフリーペーパーの企画として実施された、落合平塚市長と河野太郎議員が、平塚大神地区と相模川を挟んだ向かいの寒川町が一帯となって再開発・街づくりを進める「ツインシティ計画」に対する意気込みと期待を述べる対談で、市長は私の主張をほぼそのまま受け入れた内容を話し、河野議員も同意していた。

 リアルタイムで進行している人口減少の危機感は伝わったようだが、具体的な対策は明示されず、市としては、従前の計画通り、市中心街の利便性向上には直接つながらない「ツインシティ計画」に力を入れる方針のようだ。個人的に、「ツインシティ計画」の成否は、新幹線の新駅(計画あり)と、東京都心に直接乗り入れる在来線の新駅(計画なし)の誘致にかかっていると考えている。近くに鉄道駅のないバス便のニュータウンは、もはや魅力はまったくない。

 平塚市が公開している平成26年(2014年)1月1日現在と、1年前の平成25年(2013年)1月1日現在の推計人口を比較すると、推計人口は1年で1103人も減少した。町丁別の詳細データをみると、バス便エリアはもちろん、駅徒歩10分以内のエリアすら減少している。おそらく、工場閉鎖・縮小の影響だろう。人口減少は、少子化と、東京都心一極集中という大きなトレンド、その都市の街力(イメージ・実態)、経済・雇用環境の悪化など、複合的な要因が積み重なって発生している。にも関わらず、広範囲な「東京圏」にまとめられてしまうと、直面している各都市の個々の課題を見落としてしまう。上京する人がイメージする「東京圏」の縮小は、「郊外」の消滅につながるだろう。

・「それでも『残念な街』といわれる湘南平塚に住み続ける理由」に続く

(参考)
データえっせい:子育て期における人口増加率地図(首都圏版)

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