人生40年時代を豊かに生きるためにーなぜ、いま「持ち家」購入に踏み切ったのか


 広告代理店や不動産業界から指示があったのか、単に春の引っ越しシーズンに合わせたのか、インターネット上で反響があり、PVや広告収入(アフィリエイト)が見込めるからか、最近、「持ち家VS賃貸どちらが得か」というテーマの記事を頻繁に見かける。結論は、主に女性向けの媒体・質問掲示板は「ライフスタイル次第」という無難なもの、ビジネスマン向けの媒体は「マンションを投資と考え、損をしない投資物件を購入せよ」という強い論調、ノマド志向の独身者向けのブログ・掲示版では「リスクを負わない賃貸がベスト」と、おおむね3パターンに分かれている。

・「家を買う8つの理由」を『自宅を買うな』著者がすべて論破
・”読まない書かない売らない”週刊誌の「分譲か賃貸か」の類の特集記事
一般サラリーマンには「分譲か賃貸か」の選択肢などない

・持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想(初出はアゴラ・BLOGOSにも転載)
・持ち家に関する二つの幻想~そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争~(初出はアゴラ・BLOGOSにも転載)
・なぜ超低金利時代に新築を買ってはいけないか

 リクル―トの「SUUMO」をはじめ、広告色の強い媒体に書かれたメリット・デメリットは、話半分に受け取り、鵜呑みにしないほうがいい。確かに持ち家の購入は「投資の一種」だが、余りにも心情的な満足感を無視した書き方には反感を覚える。東京都心の賃貸住宅の割高な家賃は、一部の富裕層がワンルーム・コンパクトマンションを投資用に購入し、収益を得るため、会社員・フリーター・学生に高く貸し付けているせいだろう。デフレ・不況が続く中、住居や賃貸オフィスにかかる費用がほとんど下がらない元凶だ。その要因は、相続税の高さにあると聞いた。少子化対策として、相続税を限りなく100%近くにして、貯蓄の多い高齢者層から若年層に再配分するべきだと考えていたが、「投資」という抜け道がある限り、反対に相続税・贈与税0%で自動的に子どもが100%相続するルールにしたほうがうまく回るかもしれない、と思った。どちらにしても、生まれついた環境による経済的な差が解消されないなら、「持てる者」に搾取されないほうがまだマシな気がする。

持ち家の最大にして唯一のメリットは「団体信用生命保険」

 本題に戻ろう。「持ち家」「賃貸」のメリット・デメリットは、すでに散々語られている。中嶋よしふみ氏(@valuefp)が「持ち家に関する二つの幻想~そろそろ決着をつけたい「持ち家と賃貸はどちらが得か?」というくだらない論争~」で指摘した通り、“重要な事は、「損得」ではなく「資金繰り」、つまり「支払いが出来るか・出来ないか」”(同記事より引用)であり、貯金がない状態で定期的な収入・年金が途絶えたら、持ち家、賃貸に関わらず、行き詰ってしまう。日本には事実上、「セーフティネット」はなく、長期間、無収入の状態が続いたら餓死して死ぬだろう。事実、そうした痛ましい事件が何度も報じられている。

 収入が低下した時、賃貸ならもっと賃料の安い物件に引っ越す、持ち家なら売却する、という選択肢があるが、敷金など諸費用と引っ越し費用がかかり、今の社会システムだと、いうほど「住み替え」は容易ではない。何より、心理的なダメージが大きいだろう。いつまで働き続けられるのかわからない(定期的な収入が得られるのかわからない)、年金すらもらえるのかわからない、自然災害で住居が全壊・半壊するリスクも高い、だから「賃貸」のほうがマシ、という考え方も確かに一理ある。

 私は、下記の4項目のいずれかに当てはまる人以外は、防音や断熱効果など、室内設備のクオリティが高い「持ち家」のほうが「損得勘定」で考えると、「得」だと思い、夫婦共同名義で住宅を購入した(契約のみ)。しかし、契約後、この決断を後悔させるような記事を多く目にするようになり、自分自身を納得させるため、改めて自分なりに考えてみた。

  • 【「持ち家」より「賃貸」のほうがオススメのパターン】
  • (1)同じ場所に住み続けたくない、いろいろな街・家に住みたい
  • (2)仕事の関係で転勤や海外派遣が多く、定住できない
  • (3)親が持ち家や土地を持っている(遺産相続で確実に自分のものになる)
  • (4)生涯、独身で過ごす(絶対に結婚しない、子どもは持たない)

 結局のところ、ライフスタイルと親子関係・環境によって一人ひとり異なる。ただ、契約後に初めて知ったが、日本政府は、経済活性化のため、住宅業界(特に新築)を非常に優遇しており、「持ち家」を購入したほうがその恩恵を受けられる。最も顕著な例が「住宅ローン控除」だろう。年度や年収、ローン借入金額によっても額は異なるが、定期的な収入がある会社員にとって、これほどお得な制度はない。

 一人っ子の私は、(3)に該当するため、両親が亡くなるまで賃貸住宅に住み、亡くなったら、実家をリノベーションまたはリフォームして住むつもりだった。しかし、2011.3.11の東日本大震災後、実家マンションの耐震性に疑問を感じ、調べたところ、もともと地盤が悪いうえ、1981年の改正前の旧耐震基準で建築された建物のため、震度7クラスの大地震が発生した場合、全壊する恐れがあることがわかった。神奈川県の現時点の津波予測でも、津波による浸水エリアに入っている。つまり、万が一、経済的に行き詰った時、「戻ることができる実家」がない可能性が高い。相続しても、資産価値はほぼゼロ。相方の実家は兄弟が多いため、相続権を主張できる立場にない。当初の目論見が崩れ、悩んでいたところに、たまたま条件にマッチする手頃な物件に出会った。

 20代、30代の若年層に多いと思われる生命保険(死亡保険)未加入者にとって、「持ち家」の最大のメリットは、住宅ローンの融資を受けている人が亡くなった場合、強制加入の「団体信用生命保険」によって、ローンの残額がゼロになること。すでに配偶者・子どもがいるなら、この一点で「持ち家」に軍配が上がる。賃貸だと、本人の生存・死亡に関わらず、同額の家賃を支払い続けなければならないからだ。

※団体信用生命保険(団信)には審査があり、持病や過去の病歴によっては加入できず、ローン自体、組むことができません。その場合、団信任意加入の「フラット」を利用せざるを得なくなりますが、保険料は割高になります。そのほか、告知義務違反などで適用されない場合もあり、過信は禁物です。

※[指摘を受けて追記]団信に相当する高額の死亡保険に加入済みか、今後加入する場合は、条件は同じになり、「持ち家」固有のメリットではなくなります。しかし、「若者の○○離れ」の一つに生命保険が挙げられており、未加入者にとっては大きなメリットになります(「保険嫌い」や知識・関心を持たない無知な層は、強制されない限り、自分からは絶対に死亡保険に加入しません)。多種多様な保険商品から、自分に合った最適なものを選ぶ手間がかからず、金利に組み込まれているため、加齢による保険料の上昇がない(任意加入の「フラット」の保険料を除く)という、現時点の住宅ローン固有の団信の仕組みを評価しています。

 もちろん、損をしない最良な買い方は、手持ち資金をある程度残した上での「現金一括買い」で、当面の間、賃貸住宅に住み、貯金を増やしてから買うという判断もありだろう。ただ、現状の「住宅ローン控除」の恩恵を受けるためには、現金一括買いは決して得とはいえず、あえて住宅ローンを組み、控除の適用期間終了後に一気に繰り上げ返済するか、その後も長期間にわたって少額ずつ返済し、死亡時に、貯金を家族に多めに残したほうがいい。

 最近、ガンや事故で若くして亡くなる有名人・著名人が多い。20代後半や30代で標準的な「35年ローン」を組み、60歳~70歳前半までに亡くなると、団体信用生命保険によって、ローン残額はゼロになる。統計データを見ないと正確には判断できないが、最近の著名人の訃報と死亡時の年齢を見る限り、「人生80年」とはとても思えない。原子力発電所の事故や携帯電話の電磁波、食品添加物など、ここ数年来の新しい出来事・現象が身体に与える影響もまだわかっていない。そうしたさまざまな要因が積み重なり、今後、ガン罹患率が上昇し、ローン返済中に亡くなる人が増えるかもしれない。持ち家のいくつかのメリットのうち、団体信用生命保険の仕組みは、過去最低水準の低金利とセットでおまけ程度の扱いが多いが、私は、最大のメリットだと考える。

 将来をあまり悲観せず、「人生は40年、長生きしたらラッキー」程度に思い、今を悔いなく生きたほうがいい。この持論に従うと、一つの街に定住したい人、定住してもいいと思っている人は、長期ローンを組んででも「持ち家」を買ったほうが残りの人生を有意義に過ごせる、という結論にたどりつく。やはり、「持ち家VS賃貸どちらが得か」の問題は、最終的に「損得」ではなく、それぞれの「ライフスタイル」、もっと大きくいうと「人生に対する考え方」次第だ。

 どうせ死ぬとローンがゼロになるなら、見晴らしのよいタワーマンションや都心の一等地のマンション、郊外の広い一戸建てなど、高額でも気に入った物件を買いたい、と思う人もいるだろう。ただ、思ったより長生きしてしまい、借入金額を利子付きで全額支払わなければならない可能性もある。そうなると、老後の生活は非常に厳しくなる。よって、持ち家を購入する場合は、幸いにも長生きしたケースを想定し、毎月貯金しつつ、固定資産税やリフォーム費用などを含めたローン・諸費用を支払い続けられそうな身の丈にあった物件を選べばリスクは少なくなる。賃貸ライフを続ける場合は、万が一の備えとして死亡保険に加入するか、収入がしばらく途絶えても問題ないくらいの貯金をキープするか、すぐに実家に戻れるよう準備していれば路頭に迷う心配はない。

 それでも「持ち家」と「賃貸」で悩むなら、そもそもどういう暮らし、生き方がしたいのか、自分自身でわかっていないだけではないだろうか? もちろん、10代、20代前半なら、わからなくて当然。私自身、関わりあいの深い人、尊敬する人の死に触れるたびに、「人生」に対する考え方が変わり、最近、ようやく「なりたい自分」が見えてきた。家をはじめ、くだらない論争の多くは、自分自身と正面から向き合わない人の不安感から生まれているような気がする。

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