「auからもiPhone発売へ」という報道に対する雑感

2011/9/23 10:40 | デジタル | No Comments | 個別URL

 9月8日に掲載した記事「iPhone 3Gから3GS/4まで、iPhoneのこれまでの売れ行きを振り返る」の中で、「海外のように、国内でも複数のキャリアから提供されるようになるのか、気になるところ」と書いた。確定情報を持っていたわけではなく、ネット上の噂と海外の状況からの推測だった。まさか現実になるとは正直、思ってなかった。それほどまでに「iPhone=ソフトバンクモバイル=孫正義社長」というイメージは強い。

 前述の記事のグラフを見ればわかるが、iPhone 3Gの販売台数が大きく伸びたのは、ソフトバンクモバイルが「iPhone for everybodyキャンペーン」をスタートしてからだ。おそらくこのテコ入れキャンペーンがなければ、スマートフォンが一般的になることはなく、従来型の携帯電話が売れ続けていただろう。iPhone 4、とくに価格の安い16GBモデルがいまだに売れ続けている理由は、ソフトバンクモバイルの巧妙なキャンペーン、実質負担額の安さにあるといっても過言ではない。

 台風15号通過の影響でJR東海道線が運転を見合わせ、運転再開後も大きくダイヤが乱れた9月21日の深夜(22日午前)、日経ビジネス本誌からの転載記事「KDDI、『iPhone5』参入の衝撃」が日経ビジネスオンラインに掲載され、またたく間にインターネット上で話題になった。

【iPhone 5とKDDIに関する各社の記事】
KDDI、「iPhone5」参入の衝撃
iPhone、KDDIも販売へ 次期モデルから
KDDI、iPhone販売へ ソフトバンク独占崩れる 来年から
業界は消耗戦?au、iPhoneで巻き返し
スマホ市場、勢力図激変 KDDIもアイフォーン販売
iPhone争奪戦の舞台裏 孫氏も世界の流れに勝てず
au × iPhone5で生ずる5つの可能性
本田雅一のクロスオーバーデジタル:KDDIの新型iPhone販売にまつわる“スクープ騒ぎ”を読み解く

 その直後から続々とITニュースサイト、新聞のオンライン版は後追い記事を掲載し、わずか1日で、その背景・裏事情を探る詳細な分析記事まで出てきた。しかし、当事者のアップル、KDDI、ソフトバンクモバイルからの正式発表はない。広報は軒並み「ノーコメント」と回答しているらしいので、わざわざ問い合わせず、正式発表されるまでは、仕事では静観を決め込むことに決めた。正式発表される前に、憶測だけで情報を断定するのはよくないと思ったからだ。代わりに、自分ひとりの責任で運営するココで書くことにした。

もし、本当にKDDIからiPhoneが発売されるなら……

 日経ビジネスの第一報の通り、「iPhoneの次期モデル(iPhone 5)は、KDDIからも発売され、ソフトバンクモバイル独占から複数キャリア提供に変更になる」ならば、iPhone上陸以降の大変革になる。短期的にはキャリアのシェア、純増数が変わるだろう。長期的には、国内の携帯電話メーカー、国内限定サービスの提供者・開発ベンダーのビジネスにも影響があるかもしれない。

 携帯オーディオプレーヤー(DAP、MP3プレーヤー)は、アップルのiPodがその可能性を広げ、後を追うように国内・海外メーカーが多数参入し、新聞がソニー、パナソニック、東芝、シャープといった国内メーカーを「iPod追撃」と煽って大きく持ち上げたものの、結局、ソニーのウォークマン以外、余り売れず、各社ともひっそりと撤退していった。今、残っているのは、iPod、ウォークマン、廉価な海外製プレーヤーのみ。海外製のものは、今や店頭のワゴンセールかAmazonでしか購入できず、「変わる携帯オーディオ市場、音楽専用のウォークマンとiPod touchの対決へ」「ソニーが携帯オーディオで大躍進、月間・週間ともに初のシェア5割超え」で述べた通り、ブランド(メーカー)の選択肢は事実上、2つしかない。

 スマートフォンも、最終的に同じ結末になるのではないかと危惧している。メインは、ワールドワイドで展開するアップルのiPhone、サムスンの「GALAXY」、ソニー・エリクソンの「Xperia」の3ブランド。そのほか、通好みのHTCなどの海外メーカーが低いシェアで一定の人気を保ち、従来の携帯電話、いわゆるガラケーは「らくらくホン」などのシニア向け、安全ブザー代わりのキッズ向けしか残らなくなる。現時点まで、Android搭載スマートフォンで特徴を打ち出せていない、シャープ、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、京セラなどの国内メーカーの今後が気にかかる。特に、過去に端末を使用し、思い入れのあるシャープ、パナソニックには奮闘してもらいたい。シャープの端末のきれいな液晶画面、ペールビュー機能、他に比べてマシな文字入力・予測変換が好きだった。3Dやカメラではなく、そのあたりのよさをスマートフォンにうまく引き継いでくれれば、購入候補に挙がるのだが……。

 最近、ガラケーのメリットは、「パケット使い放題」のデータ通信契約を契約しなくとも使える点にあると思うようになった。最低レベルの通話料金しか支払わなくとも、家族間の通話・メールと、通信料無料の携帯電話インターネットを利用することができる。キャリアから見ると、支払い額の少ない嫌な客だが、契約者数の上乗せには貢献する。人数的にもおそらく多く、契約数確保のためにはないがしろにはできない。

 本題に戻ろう。KDDIとソフトバンクモバイルの2キャリアがiPhoneを販売するようになれば、スマートフォンの販売台数に占めるiPhoneの割合はますます高まり、国内ではiPhoneが最も人気のある端末になることは間違いない(すでに1位で、iPhone 4は2010年の販売台数No.1機種だった)。同時に、auのガラケーは販売終了となり、iPhoneは上位機種の扱いになるだろう。

【現状のイメージ】
ドコモ:スマートフォン、iモード(ガラケー)、らくらくホン
au:Android、EZweb or LISMO(ガラケー)
ソフトバンク:iPhone、お父さん(ガラケー)

【今後のイメージ】
ドコモ:スマートフォン、iモード(ガラケー)、らくらくホン
au:Android(ガラスマ)、Android(グローバル機)、iPhone、Windows Phone
ソフトバンク:iPhone、お父さん(ガラケー)

 こうなると、ドコモ、ソフトバンクモバイルも、同様にガラケーを国内メーカー製のAndroid搭載スマートフォンに置き換える動きを取るだろう。iPhoneの複数キャリアからの販売決定は、「ガラケー終了のお知らせ」にほかならない。国内メーカーは、キャリアの要請を受け、ガラケー置き換え向けの日本独自機能入りスマートフォン(ガラスマ)のみ開発する。ガラスマはグローバルモデルに比べ、販売数が少なく収益性が悪化。最終的に、合併・撤退・規模縮小を余儀なくされる。

ソフトバンクからiPhone 5が発売されない可能性を考える

 ふと思ったのだが、ソフトバンクモバイルからauへ、取り扱いキャリアが変更になる可能性はないのだろうか? 新しいiPhoneは、日本ではKDDIのCDMA版しか発売されず、代わりに「SIMカードスロットを搭載した新iPod touch」が量販店のiPodコーナーで売られる。もともと量販店はアップルのコントロール下にあり、売りやすいはず。前年に比べ販売台数が大幅に減っている第6世代iPod nanoのテコ入れにもなる。もちろんSIMロックはかかっておらず、端末購入後、音声・データ通信サービスを契約すれば携帯電話として使うことができ、契約しなければ従来のiPod touch同様、音楽プレーヤーだ。そして、一部のユーザーが待ち望んでいた「端末と回線の分離」が成立する。

 私が見た範囲では、誰もこの可能性に言及していないが、もし実現すれば、メーカーもキャリアもユーザーも、全方向うまく収まるのではないだろうか? iPhone 5では無理でも、その次のiPhone 6では実現するかもしれない。キャリアは、自社の回線の品質や付加サービス、料金が差別化のポイントになり、同時にAndroid搭載スマートフォン、Windows Phone搭載スマートフォンをガラケーの置き換えとして強力にプッシュできる。ソフトバンクモバイルは低価格を、ドコモは回線品質の良さをアピールするだろう。

 ジャンルごとに機種やメーカーのシェアを集計する立場としては、集計の手間が増えるため、非常に困るが、iOSを搭載したiPhoneは、スマートフォンとは別ジャンルとなり、比較されにくくなる。日本の特殊なキャリアの力関係に配慮しつつ、iPhone/アップルのブランドイメージを高め、ユーザーにとっても利便性の高い新たなエコシステムが完成する。端末と回線の分離の仕組み・概念がわからない層は、KDDIのCDMA版を購入すればいい。これならば、国内メーカーは、ガラスマのメーカーとして生き残ることができる。グローバルで展開するメーカーに比べ、厳しい状況にあることには代わりがないが、iPhoneと比較されなくなる分だけ、もっと思い切った斬新なデザインができるはず。とにもかくにも、正式発表を待ちたい。

※本記事は個人的な見解に基づくものです。予想を含んだ内容のため、実際とは異なる可能性があります。

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