今だから言えるiPad発表日の出来事

2011/1/16 13:00 | つぶやき | 個別URL

 iPad発表からもうすぐ1年。2010年1月28日木曜日は、個人的に、生まれて初めて救急車に乗った日であり、結果的に有給休暇を取得し、自宅で寒さと痛みに震えながら仕事をしていた、忘れられない一日である。

 当時、私はWebサイトの運営に関わる業務を主に担当していた。2008年4月から2010年1月まで、記事は一切執筆していない。アップルの深夜の重大発表については、英語を理解する記者がアメリカでの発表をもとにいち早く記事化し、私が早朝、できるだけ早く出社して登録・配信作業をすることになっていた。


 2010年5月まで、Twitterにまったく触れていなかった。Twitterでリアルタイムで情報が飛び交っていることを知らなかった。何より、記事執筆から離れ、デジタルのトレンドも最低限しか追っていなかった。当時の上司から早朝配信を指示されたものの、発表される製品がどれくらい重要で、どれくらいインパクトのあるものなのか理解していなかった。

 28日の朝、予定より遅く起きてしまい、約束した時間に間に合わないと焦っていた。いつも必ず食べる朝食すら食べず、傘を手に持って自転車に乗り、駅に急いで行こうとして、自転車ごと前のめりに転倒し、コンクリートに顔面を強打した。傘がペダルに引っかかったのだ。時間は朝6時47分頃。白いコートは口と唇からの出血で血まみれになり、左腕が猛烈に痛かった。

 近くの派出所から警官が来て、救急車を呼んでくれた。怪我自体はたいしたことないとわかっていたが、早朝のため、病院が開いていないので止むを得ない。かくて、生まれて初めて救急車に乗り、搬送先の病院で検査を受け、骨には異常がない、との診断が出た。処方されたのは湿布と痛み止めの飲み薬だけ。顔と足、手のすり傷はタクシーで自宅に帰宅した後、相方に消毒してもらった。

 自宅に戻って来たのは8時半頃だっただろうか。パソコンを立ち上げ、他の記者が執筆していた記事の登録作業を始めた。そうして公開した記事が下記である。

・<速報>米Apple、マルチタッチ対応の9.7型タブレット「iPad」を発表、Webを新感覚で(2010/01/28 9:35更新)

 実は、緊急の記事修正に備えて、自宅からサイトの管理システムに接続できるよう設定してあった。記事公開後、上司にメールと電話で相談し、急遽、有休を取得することにした。相方は血を落としたコートをクリーニングに出した後、出社した。私は他の作業を行った後、痛みが引かないので改めて病院に行こうとしたが、木曜日はどこも休診だった。すり傷には、以前に皮膚科でもらったあかぎれの薬を塗ってしのいだ。後で医者に確認したところ、適切な薬だったそうだ。口の中が切れて痛いので満足に食事も取れず、焦って走り出した自分の浅はかさを悔いた。

 打撲した左腕はその後一か月痛みが引かず、欠けた前歯を丸く磨くまで唇の傷は治らなかった。かかった医療費は、緊急病院、歯科、整形外科、皮膚科あわせて1万円近く。クリーニング代、バス代もかかった。100%自己責任の自業自得としか言えないが、iPadが深夜に発表されなければ、この事故は起きなかっただろう。特に前歯の欠けと右手にシミのように残った傷は取り返しがつかない。もう二度と元には戻らない。そんなわけで、当初はiPadに恨みすら抱いていたが、発売直後に、地元のヤマダ電機平塚店でiPad Wi-Fi +3Gモデルを衝動買いして今に至る。

教訓:
自転車や自動車に乗る時は焦らず、平常心で走りましょう。自転車の傘さし・傘持ち運転は危険です。家庭には傷薬の常備を。

 その後、記事執筆に復帰し、Twitterに触れ始め、アップルファンの個人ブログ、他サイトの動向を知るにつれ、そもそも通常の始業時刻前の早朝にiPadの記事を配信する必要があったのか、疑問に思い始めて来た。アップルファンは深夜まで起き、いち早く最新情報を入手している。数年前、Twitterが存在しない頃は、朝の6時や8時に記事を公開すると早いほうで、それだけ多くのアクセスを稼ぐことができた。しかし、今は米国発表後、1時間以内に記事をアップするサイトやブログも珍しくない。何より、Twitterのリアルタイムのツイートの速さには、一定の長さのある文章は敵わない。

 自宅と勤務先はかなり距離が離れている。もし、通常通り、出社していたとしても、記事の公開は9時台だっただろう。予定の時刻に起きられなかった時点で、自宅作業に切り替えるべきだった。iPad発表前に、Twitterの広まりを知っていれば、別の対応を取るよう提案できたはず。どちらにしても無知で知恵が回らなかった自分が悪い。

 Twitterと、一部のフットワークの軽いブログ、ニュースサイトの速報性に、新聞、テレビ、雑誌、平日昼間しかニュースサイトは到底敵わない。敵わないのに、速さで勝負を挑んでどうするのだろう。同じ土俵に乗るなら発表直後の深夜更新しかない。Webサイト、オンラインのWebサービスは24時間いつでも営業。利用者同様、運営側も24時間フル稼働でなければならない。
iPad
 インターネット普及し、手軽に誰もが発信できるようになったことで、情報の入手経路と重み付けが変わって来ている気がする。この1年間で、メディアと報道に対する意識が変わった。物理的な痛みを伴ったiPadとTwitterのおかげだ。

つぶやき, , ,