次世代インフラ構想、国民IDの導入で行政サービスの全国均一化・オンライン化を


 2010年5月、電子政府実現のため、国民一人一人に識別のための共通IDを割り当てる「国民ID制度」の導入が決定した。生活に直接関わる大規模な制度変更だが、インターネット上では大きく扱われず、私自身、12月まで「決定事項」とはまったく知らなかった。しかし、深い議論を行わないまま、表面的に国民ID(共通ID)制度を導入しても、現状とさして変わらないだろう。単なる税金の無駄遣いだ。

 政府のIT戦略本部(本部長・鳩山由紀夫首相)が5月11日、2020年までに電子政府を実現することを掲げた新戦略を発表した。実現のための共通基盤として、2013年までに国民一人一人に識別のための共通IDを割り当てる「国民ID制度」を導入することを盛り込んだが、個人情報をどう保護するか、具体策の詰めはこれからだという。

 内閣府によると、電子政府は政府や地方自治体間のデータのやりとりを前提とするため、国民ID制度の導入が必要になるという。引っ越しや子どもの誕生に伴うさまざまな役所への届け出を簡単に済ませることができるなどの利点があると説明する。

asahi.comより引用

参考記事:
国民ID制度とは
社会保障・税の番号制度、国民ID制度、アイデンティティ連携の議論がかみ合わない理由

 一方、2015年をめどに国内の全世帯に光回線を整備する「光の道」構想については、メディアに多く取り上げられ、賛成・反対含め、さまざまな議論が交わされた。最終的にソフトバンク案は却下されたようだ。

「光の道」構想に関する意見募集(総務省)
ソフトバンク「光の道」への提言
光の道、その誤謬と、必死なのはなぜの話

 2010年11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、日本以外のAPEC参加国は、2020年までにブロードバンド普及率100%を目指す採択(※2)に同意したらしい。先進国であるはずの日本が、インターネットの使えない層に配慮し、大胆な戦略を打ち出すことができていないのは皮肉だ。世界は、次世代高速ブロードバンド普及100%に向けて、戦略的にインフラの整備を進めていく。

 とはいえ、環境を整えても、具体的なメリットがなければ、現在、インターネットを利用していない層は契約しないだろうから意味がない。具体的には、共通IDの導入によって、今は行政機関や会社、病院しかアクセスできない自分自身の情報(年収、税金支払い額、通院履歴・カルテなど)に自宅のパソコンからアクセスできるようになり、遠隔診療や証明書の発行などが可能になるくらいのメリットが欲しい。「光の道」構想は、国民ID制と連動して考えるべきだ。導入後に必要となる、インターネットや無線の設定、各種ツールの使用方法など、ICT利活用のための啓蒙も欠かせない。

「光の道」構想と「共通ID」に関する私論

 電気・上下水道・高速ブロードバンドインターネット回線(光ファイバー)を、必要最低限の生活インフラとして全国津々浦々整備する。ガスはオプションで、できるだけプロパンから都市ガスに移行する。これらインフラを整備できない山間部、諸島などには定住しない。

 いわゆる僻地を整備対象外とすることで、国内の居住可能エリアは狭くなるが、インフラ整備にかかるコストを低減できる。電波を使ったテレビ放送は将来的に終了。インターネット回線を使った生放送、オンデマンド配信(動画コンテンツ)に移行する。ここまで割り切った方針で進めるなら、「光の道」は、今後100年の日本の繁栄を見越した成長戦略になる。

 インターネット回線の必須インフラ化と同時に、行政サービスの全国均一化・コスト削減のため、国民ひとりにつき1つのIDを発行し、すべてを紐づける共通ID制を導入。ゴミ処理や地域活性化策など、地域固有の問題を除き、制度や仕組み、システムを共通化し、日本全国どこでもICTを利用した各種サービスを利用できるようにする。

 認証端末は指定のSIMカードをセットした携帯電話。共通IDの認証カードとなるSIMカードは、出生届の提出時に役所から無料でもらい、インターネット回線会社や携帯電話会社と契約して設定してもらうと、その端末でサービスを受けられる。市役所や駅などに設置された行政のサービス端末では、常に無料。光ファイバー普及率が100%になれば、ほぼ全国民が自宅で電子カルテなどを利用できる。

 携帯電話会社は、SIMロック端末とSIMフリー端末の両方を売る。前者は共通IDの利用に対応した日本固有の携帯電話(ガラケー、フィーチャーフォン)、後者はSIMフリーのスマートフォンなど。若い世代を中心に2台持ちが一般的になるので、今より携帯電話端末が売れ、一人あたりの通話料・データ通信料が上がる。

 この案を相方に話したところ、シニア世代が猛反発すると一笑された。私自身、1、2年のうちに細部まで詰め、システムの構築まで進められるとは思っていない。目標は10年後の2020年。その間、新たな設備投資は極力行わない。既存のシステム、仕組みを最大限活用し、技術トレンドの変化に合わせてフレキシブルに変えていく。

 最大の目的は、自分の公的な情報に自分でアクセスできるようになること、地理的に離れた複数の機関に出向かなければならない、行政関連の各種手続きの非効率をなくすこと、割高な光ファイバー・携帯電話の料金設定の見直しが進むこと。別の案でもいいが、投じた費用に見合う有益な仕組みを構築して欲しい。

※本記事は、2010年11月21日Twitterに投稿したツイートをもとに加筆したものです。
※2 池田信夫さんのツイートで初めて知り、執筆にあたり、改めて検索したところ、どうもツイートの内容と実際の「沖縄宣言」の採択とは若干異なるようです